不朽の名作ファイトクラブ。
SWOT分析で導き出されたのは、
スペース・モンキーの
スペース・モンキーによる
スペース・モンキーのための映画
宗教の成り立ちを見せられているような錯覚に陥る映画です。
SWOT分析とは?
自社のサービスや商品が取り巻く環境を、
以下の4つで分析する手法
内部要因(強み・弱み)
外部要因(機会・脅威)
内部要因
強みも弱みもインパクトが凄い。
低予算で無名俳優でもいい映画はありますが、
超有名どころが前面に出ていて、
かつ、物議をかもすような尖った部分がある映画に仕上がってるのが特徴ですね。
ファイトクラブの強み(Strength)
- 出演者にブラット・ピット
- 監督がデヴィッド・フィンチャー
- 予告編のインパクト
映画にとっての三種の神器のような強みです。
出演者、監督、予告編。
私は脚本や音楽も多少は気にします。
代わりに予告編に関しては、見ない派。
本編見るまで情報はシャットアウトしたいのです。
まず、出演者のブラット・ピット。
今でも大スターですが、当時もすでに絶大な人気でした。
そのブラット・ピットが、筋骨隆々な体を見せつける映画なので、
それでだけで話題ですね。
また、役のハマり具合がすごかったです。
男ならこうありたい!と思わせる風貌と物言い。
深紅のジャケットを探した人も多いのでは?
同時に監督のデヴィッド・フィンチャーも凄い。
エイリアン3、ゲーム、セブンなど、独特な映像美で見せる点と、
CGの使い方の上手さ、オープニングシークエンスへのこだわりなど、
観客のみならず、役者の中でもファンが多数いる監督です。
このブラット・ピットとデヴィット・フィンチャーが、
セブンに続いてタッグを組む。
それだけで見たくなりますね。
原作ファンとしても、あの空気感とセリフ回し。
監督がフィンチャーで心底良かったと思える仕上がりです。
あとは予告編。
「俺を力一杯殴ってくれ」
から始まり、
「ファイクラブのルールその1:口外するな。
ファイトクラブのルールその2:口外するな。」
こういったセリフ回しが入ったこの予告編は、
どんな映画なんだろう?とワクワクさせてくれます。
映画の内容を知っていても、良くできた予告編と言えます。
演者。
監督。
予告編。
映画を観たくなるこの三種の神器のバランスが素晴らしい映画ですね。
ファイトクラブの弱み(Weekness)
- 暴力的なイメージ
- 男向けのイメージ
- 主演がエドワード・ノートン
弱みとして避けられないのは、暴力的なイメージでしょう。
男が殴り合うという話を軸に展開されるので、仕方ありません。
イメージのみならず、実際に生々しい暴力表現が多数あるのが実のところです。
”マッチョポルノ”と評されたこともある映画です。
言い訳にはならないかも知れませんが、劇中での死人は1人でした。
こういった暴力表現の多い映画なので、
どうしても男向けの映画になってしまいますね。
いくらブラット・ピットが好きでも、
予告編でリアルに殴り合いのシーンを見せられると、
女性が好んで、鑑賞してみよう!という風にはならないのかなと思います。
弱みとして挙げるのには抵抗がありますが、
ここは冷静に主演がエドワード・ノートンを弱みとしました。
公開当初は、誰これ?というのが正直な感想です。
強みで出演ブラット・ピットとしていますが、
主演、この映画の主役はエドワード・ノートンです。
ただこのマイナス要素、とんでもないプラス要素に変わる部分でした。
エドワード・ノートンの演技力が周りの役者に比べて桁違いに凄い。
よく”怪演”という褒め言葉を聞きますが、
そうではなく、”主人公そのものになった”というのが正しい表現。
この映画をきっかけに、私の一番好きな役者はエドワード・ノートンになりました。
以来、彼の出演作も監督作も全て見てます。
それぐらい、この映画の中のエドワード・ノートンは凄い。
でも、残念ながら知名度はブラット・ピットの方が遥かに上で、
集客力も比較できるものでもないです。
そういった意味で、主役がエドワード・ノートンであると、
全面的に押し出していれば、
ここまで話題の映画にはならなかったのではないかと思います。
外部要因
この映画の真骨頂は、外部要因にありますね。
公開後の余波が凄い。
そのおかげで、脅威となるような変なのまで現れました。
ファイトクラブの機会(Opportunity)
- 歴代最高映画ランキング
- 最高の映画キャラクター
- カルト化
公開されてから、やはりそのインパクトは凄いものがありました。
以下、Wikipediaより引用になります。
2008年に英国最大の映画雑誌『エンパイア』が、読者1万人、ハリウッドの映画関係者150人、映画評論家50人を対象に「過去最高の映画」に関するアンケート調査を行い「歴代最高の映画ランキング500(The 500 Greatest Movies of All Time)」を発表した。その結果、『ファイト・クラブ』が10位にランクインした。また、同年に同誌が「最高の映画キャラクター100人(The 100 Greatest Movie Characters)」の調査を行ったところ、一位は『ファイト・クラブ』でブラット・ピットが演じたタイラー・ダーデンだった。
こういった評判もあってか、ファイトクラブを生涯の1本に挙げるファンも多く、
カルト映画として語り継がれる事となりました。
本当にブラット・ピットのタイラー・ダーデンは素晴らしい。
小説での雰囲気も全く違和感なく再現されています。
もちろんエドワード・ノートン扮する主人公も。
ヘレナ・ボナム・カーター演じるマーラも。
この雰囲気をよく再現できたなと、驚くことばかりなので
原作を未読の方はぜひ読んでみてください。
映画の外側でのタイラー・ダーデンの評価の凄さは、
やはり作品の中のタイラー・ダーデンが凄いから。
劇中、彼に魅了されて付いていくスペース・モンキーが後を絶たない。
(スペース・モンキーはファイトクラブから生まれる過激思想派の参加者)
映画自体がカルト化してますが、
映画の中でもカルトな宗教を模したような、
狂った世界の勃興を見ることができます。
ファイトクラブの脅威(Threat)
- ガチンコ・ファイトクラブ
- 9.11同時多発テロ
映画が話題になると、便乗して変なテレビの企画が持ち上がりました。
ガチンコ!というTOKIOがMCを務める番組内で、
プロで活躍されていたボクサーの竹原氏が、
ヤンキーをプロボクサーに育てるというものです。
多数のヤンキーが集まる中でのいざこざが、
ヤラセ全開で見てられない番組でした。
ただ、話題になっていた番組というのもあり、
”映画のファイトクラブもガチンコ!みたいなものじゃないの?”
という誤解が付いてしまいました。
実際、私の周りではボクシングの映画だと思ってる人が多数います。
あとは、映画のネタバレを含んでしまいますが、
9.11を想起させるようなシーンがあるというので、
完全に自粛モードになってた時期がありました。
こんな暴力に満ちた特殊な映画なので、
興行成績は芳しくなかったようです。
こちらも、Wikipediaの引用です。
2001年の9・11アメリカ同時多発テロを、欧米先進国の資本主義社会・グローバリズムにあえぐ市民の立場から、予見した作品[6]。実際、同時多発テロ直後の、実行犯が特定されていない段階においてのマスコミの論調でも、反グローバリズム活動家とイスラム過激派、双方の犯行の可能性が語られていた。
アメリカでは反響を呼び、余り注目されていなかった小説版とその作家に脚光があたるきっかけになった。評論家からは(映画内で死んでいるのは一人にもかかわらず)あまりにも暴力的だと非難された上、公開当初は製作費を回収できずフォックス重役が何人も解雇される事態となった。
興行的な失敗と聞くと、「面白くないから」と思われがちです。
当然、面白くないからという理由で失敗した映画は多いでしょう。
でも、作品のターゲットがニッチであればあるほど、母数が減ってしまうのはマーケティングをする上では仕方のないこと。
本作も、例には漏れなかったようです。
ファイトクラブのレビュー
見たら伝わるこの凄さ。
でも、マイナス要因である暴力的、男性的なイメージのせいか
観たことない人が多い不遇な作品な気がします。
暴力的ではありますが、大量消費社会に対してのアンチテーゼであったり、
カッコ良く見せようと外見だけを磨くことへの疑問など、
考えさせられる要素も多いんですよ。
カルト化していると挙げましたが、
作り手としては興行的な成功ももちろん大事ですが、
長いこと愛される作品として世に確固たる地位を確立できる方が、
よっぽど栄誉あることなのではないでしょうか。
そう、この映画を受け入れた人の中では聖書のような存在。
スペース・モンキーの
スペース・モンキーによる
スペース・モンキーのための映画
信者となる覚悟があるなら、鑑賞することおオススメします。
この作品は、宣伝活動で内容自体がストレートに伝わったおかげで、
それを受け入れる人にとっては類い稀な良作となりました。
逆に、それを受け入れられない人にとっては、
鑑賞の対象には当たらないという判断を下された。
そして、後者が圧倒的に多いがゆえに興行的には成功と言えない結果に終わった。
映画というのが、尖った芸術の側面も持ち合わせているのでは?
と、考えさせられますね。